京阪園芸の伝統 – 004 世界に咲く日本の花

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京阪園芸の伝統Traditional Culture

海外でも知れ渡っている日本の園芸。
1999年にロングウッド・ガーデンで開催された菊人形ショーは京阪園芸の職人技が成せる技であった。
川井 ゆう氏「受け継がれる技、日本の園芸力」
(ガーデナーズ通信Vol.15 2019年春夏号)からの転載記事でご紹介致します。

世界に咲く日本の花

観光で訪れたコペンハーゲンの街で驚いたことがある。花屋の店のガラス窓に漢字で「花」と書かれていたからである[図1]。

日本の園芸は日本で想像する以上に世界に知れ渡っている。盆栽が「Bonsai」、生け花が「Ikebana」として世界で通用することは私も知っていた。

でも、「Kokedama (苔玉)」にはびっくり。「Oshibana(押し花)」というポルトガル語の本にはもっとびっくり。英国の園芸雑誌には「Shogetsu(松月)」という桜、「Hagoromo(羽衣)」という椿、「Ginga(銀河)」というハラン、「Showa-beni(昭和紅)」という藤など、日本語名のまま紹介されている。日本の園芸を熱心に学ぼうとしている。欧米の園芸家は私よりはるかに日本の植物に詳しい。そして気候や風土が異なるのに栽培の努力を惜しまない。

欧米では、古くから日本の植物が紹介されている。19世紀には日本の植物が生きたまま送られることも増え、栽培意欲はどんどん高まっていった[図2]。

1888年には英国の園芸雑誌に、「日本の菊がなくては秋が過ごせない」という記事さえある。日本の植物は今や世界中で花を咲かせている。でも欧米の園芸家でさえ、1861年から存在を知っていながら結果的に手の出せなかったものがある。

菊人形である。

欧米で書かれた菊人形の記録は多い[図3]。欧米に菊人形がないからといって、欧米の人たちが知らないわけではない。もちろん枚方の菊人形も知られている。たとえば1933年には「日本一と称される枚方菊人形ショーは、京阪沿線の大阪と京都の中間にある」と記され、写真と共に詳細に描写されている。1991年には、ロングウッド・ガーデン(米国)の菊花展は菊人形の影響が大きいと記され、枚方の菊人形と菊師の写真を載せて敬意を表している。

欧米の人たちは、日本を訪れて菊人形を見物した。自分たちでつくろうとしたこともあった。だが結局、日本の職人を招いて欧米で菊人形展を開くことに意を注いだ。

菊人形展は一朝一夕にできるものではない。日本の様々な職人技が結集したものだからである。そのうえ人形菊の栽培も至難の業だった。しなやかな枝、枝先に集まる花。花は菊付けや着せ替えに応じてその時々に大量に用意しなければならない。逆に人形菊が栽培できる日本の園芸力を評価すべきなのである。しかも100年にわたって、栽培を続けてきた京阪の菊培養師の功績は大きい。

ロングウッド・ガーデンの熱望は、数々の壁を乗り越え、1999年にようやくかなう。ひらかたパークの職人たちが渡米し、ついにロングウッド・ガーデンで菊人形ショーが開かれた。

文章:川井 ゆう

1964年大阪府枚方市生まれ。菊人形研究者。博士(家政学)。
著書に『わたしは菊人形バンザイ研究者』(新宿書房)がある。

〇出典:大阪府 枚方市役所 観光にぎわい部 観光交流課「ひらかた菊人形今昔」 〇編集協力・資料:京阪電気鉄道/ひらかたパーク 〇制作:京阪エージェンシー